屋久島の夏休み

　屋久島の川の水は、とても綺麗である。しかし、日本でもっとも急勾配の傾斜を持つ川なので降った雨は太陽に温められるまもなく、海へ流れ込んでしまい、南の島の真夏でも水温はとても低い。水着一枚では５分と泳いでいられない。しかし、ウエットスーツがあるととても快適で、顔だけに冷やりと来る冷たさがなんとも言えないのである。
　川での子供たちとの遊びは鬼ごっこであるが、元水泳部の私では子供たちと勝負にならない。私は安易に子だもたちに捕まってやるようなことはしない。だから、去年までは一番下の子が鬼になると、誰も捕まえられないのでこの遊びは終わりになっていた。しかし、今年は様相が一変してしまった。生後一年の愛犬を川に一緒に連れて行ってこの犬も一緒に鬼ごっこをするのである。この犬、人が泳いでいると上に乗っかってくる習性があり、しかも特に私が泳いでいると必死になって追いかけて乗っかってくる。したがって、鬼になった私は犬に触ることができないが、鬼になった犬は私に触ることができるという、ルールを決めておくと、これがなんともいえない面白い鬼ごっこになる。子供達は自分が鬼になると、餌をやるような声で犬を呼んで触ればそれで鬼から解放される。その後、犬は餌をもらえないと分かると、とてつもない勢いで私めがけて追いかけてくるのである。足ひれをつけている私の泳ぎのスピードより、犬掻きのほうが早いのである。あっという間に、背中の上に乗られてしまい、結構大きな犬なので私は溺れそうになる。無敵の父親が犬に押さえ込まれる姿が、子供たちにとってはこの上なく面白いらしく、ケタケタと笑う声が川原に響くのである。

　２ｍ以上もある花崗岩の転石が川にはゴロゴロとしています。水深は深いところで３ｍ程。鮎、川えび等がいます。