何のために生きるの？

　高校生から２０歳までの頃、私は悩んでいました。
「人間は何のために生きるのだろうか？」と。
高校を卒業して、一年間浪人生活をしていました。予備校に行くだけの金も無かったので宅浪でした。（宅浪なんという言葉は今は無いのかな？）友達の家の工場へアルバイトに行ったり、児童館で子供の面倒を見るアルバイトをしていました。その児童館では、定年退職したおじいさんとローラースケートの貸し靴の係りをやっていました。そのおじいさんは、尺八を吹いたり詩吟をしたりと多彩な人で、子供達から絶大な人気がありました。ある日、お茶の時間にこのおじいさんにこの疑問をぶつけてみました。

「人間は何のために生きるのでしょうか？」

そのおじいさんの話では、ある人がお釈迦様に同じ質問をしたとき、こう答えをもらったそうです。

「人間は、遊び戯れるために生まれてきたのです。」

当時の私は、「人生とはそういうものなのかなぁ。」と感じましたが、自分の悩みを解決するだけの意味のある言葉ではありませんでした。しかし、あれから３０年近くたっても不思議と心に残る言葉でした。
翌年大学に入り、アルバイトや大学のレポートに追われる生活が続くようになり、いつの間にか「人間は何のために生きるのだろうか？」という悩みは解決しないまま、いつしか忘れてしまいました。
今考えるのに、この種の悩みとは、人生に行き詰った時や何か自分に大きな問題を抱えた時に心に湧き出してくるようです。

私は大学を卒業した後、就職して仕事に追われ、仕事に慣れて余裕が出てきたら、２５歳でテニスをはじめ、３０歳で山に夢中になり、３５歳で建築士を目指し、４０歳でピアノを弾き始め、４６歳から絵を再開しました。これらはいずれも相当な熱の入れようで、例えば建築士の勉強は毎日、寝る時間を削って、毎日４時間ぐらい勉強しました。建築士に合格するまで４年間ぐらいそんな生活を続けていました。
　いつの間にか私は「遊び戯れる」生き方をしてきたようです。そしてすでに人生の後半戦を迎えている今後も「人間は何のために生きるのだろうか？」とか「俺の人生はいったい何だったのだろうか？」とそんな悩みを抱かず、死ぬまで遊び戯れてしまう気がします。
end　