運　転　免　許

運転免許を取ったのは、大学３年生から４年生に上がる春休み。生協があっせんする合宿自動車学校だった。３０年以上も前の話で、今では到底想像も使いない生活である。１５畳ほどの大部屋に１０人以上が押し込まれ、朝食は食パン２枚と牛乳１本。夜は、御飯だがおかずは品だけ。教習中にへまをすれば、物差しで腿をたたかれる。田んぼの真ん中に置き去りにされた教習生もいた。そんな地獄の生活の中で取れた免許はうれしかったが、本来、車に興味がない私は、免許をとっても１０年くらいは運転をしなかった。
　職場の上司がこんなことを言っていた。
「都会生活をしているのに、免許なんか必要ない。車の維持費を考えてみろ。その分、タクシーを使った方がどれだけ便利で経済的か？」
　車の維持費分タクシーを乗るとなると、かなり乗れるなーと、私はこの意見に感心していたのである。
　しかし、今、車の旅をしている私にとって、運転免許をとったのは、よかったと思う。結果的に、その後、私の人生はいろいろな方向へと変わっていったと思う。
　この年になって思うことは、お金で解決しないで、なんでも自分でやれる能力を身に着けることが人生を楽しむ上で、一番重要なのだと思う。
　車の運転、料理、大工仕事、絵を描く、ピアノを弾く、文を書く、自分で旅行の計画を立てる、、、、、自分でやることがあって、初めて人生は面白いものである。
　やることがなくて、一日中、テレビを見ている。楽しもうとすると、お金がかかる。時間を持て余してしまう。そんな生活は、考えただけでもぞっとしてしまう。